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象牙の輸出入禁止と販売自粛について

_象牙は過去にそれを目当てに象が乱獲されたため、1989年ワシントン条約により国際取引が禁止されました。

その後、象の個体数は増加に転じたことから、南アフリカ・ボツワナなど個体数の多い国では、自然死した象からとった象牙の在庫が増大した場合にのみ、輸出量・輸出先限定で特別に輸出入が許可されたこともありました。


_ところが、2000年頃からアジア諸国の経済成長に伴い、経済成長自体は喜ばしいことなのですが、元々象牙消費国であった中国・タイなどでの象牙需要も急速に伸びはじめました。そして、これに資金源として目を付けた国際武装テロリスト集団による密猟が始まり、再び象の個体数が減少しはじめ、現在は以前にも増して絶滅の危機が叫ばれる事態となっています。

 

 密猟の取締りは継続的に強化されてはいるものの、武装テロ組織相手の取締りは小さな戦争の様相を呈し、犠牲者を出す激しいものとなっており、象の個体数にも未だ回復の傾向が見えていません。

 

 このため、象牙がお金を生む状況=「象牙の需要」 を失くすことで資金調達の手段としての密猟を無効にしようと考え、国際取引だけではなく、国内販売もが規制の対象とされるようになりました。

 

 日本においても、登録・申告のみであった象牙販売が2021年より免許制となり、大手のモール、総合スーパー、インターネットモール等を中心に、象牙製品の販売自主規制が行われています。

 当店でも2021年より実店舗・オンライン店舗ともに象牙製品の販売を中止しています。

 

 TRAFFIC(注)によると、1989年のワシントン条約締結後、日本の象牙需要はピークであった1980年前半と比べて当時の10%程度にまで縮小しています。今では象牙製品といわれてもせいぜい印鑑ぐらいしか身近に見当たらないことが多いせいか、SNSなどで今日象が絶滅の危機に瀕しているのは印鑑のせいであるかのような話が広まることがありますが、上述の通りそれは事実ではありません。

 

 また、2021年現在の日本における象牙取引の問題点は、象牙販売のための違法輸入ではなく、逆に象牙需要が激減したため過剰となった国内在庫の違法輸出にあります。WWF(世界自然保護基金)の報告によると、2011年から2016年の6年間に日本からの違法輸出として押収された象牙は2.4トンを超え、逆に日本へ違法に輸入され押収された象牙はわずか43キロでした。

 販売を規制するなら民間に売れなくなった在庫を抱えさせ続けることは無理があり、倒産や廃業などでいずれ犯罪組織に流れて違法輸出が行われてしまいます。

 

 以上を踏まえて、当店の象牙製品販売中止はあくまで象牙の在庫状況等諸々を考慮した上での判断であり、国の免許を受け公正に申告された国内在庫を利用し消費者へ販売することを否定するものではありません。在庫に対し補償も含めた解決が何ら示されていない現状で、販売することだけを非難するのは公平ではないからです。

 

(注)「TRAFFIC」・・・WWF(世界自然保護基金)とIUCN(国際自然保護連合)の共同事業として設立された野生生物の取引を調査・モニターするNGO